「あの店は敷居が高い」と聞いたとき、「高級で入りにくい店」を思い浮かべる人は多いでしょう。一方、辞書などで本来の意味とされてきたのは、相手に不義理をして、その家へ行きにくいという意味です。文化庁の調査を手掛かりに、二つの意味と誤解を避ける言い換えを整理します。
結論:本来は「不義理があって行きにくい」
「敷居が高い」は、辞書などで主に本来の意味とされてきた用法では、相手に不義理をしたり迷惑を掛けたりしたため、その人の家へ行きにくいことを表します。
例えば、借りた物を長く返していない友人の家について「すっかり御無沙汰したうえ、借りた本も返していないので敷居が高い」と言う場合です。行きにくさの理由は建物の格式ではなく、自分と相手の間にある気まずさです。
「高級で入りにくい」と理解する人の方が多い
実際の理解は大きく変化しています。文化庁の令和元年度「国語に関する世論調査」では、「敷居が高い」を「高級すぎたり、上品すぎたりして、入りにくい」と捉えた人が56.4%でした。「相手に不義理などをしてしまい、行きにくい」を選んだ人は29.0%です。両方を選んだ人は12.2%でした。
| 文化庁調査の選択肢 | 令和元年度 | 平成20年度 |
|---|---|---|
| 不義理などがあり、行きにくい | 29.0% | 42.1% |
| 高級・上品すぎて、入りにくい | 56.4% | 45.6% |
| 両方 | 12.2% | 10.1% |
平成20年度から令和元年度までの約11年間で、本来の意味とされてきた回答は42.1%から29.0%へ減り、「高級・上品で入りにくい」という回答は45.6%から56.4%へ増えました。言葉は実際の使用を通して変化します。現在は、新しい意味が広く共有されていることも無視できません。
正しい・間違いだけで決めると伝わりにくい
ここで大切なのは、相手の用法をすぐに「誤用」と決めつけることではありません。文化庁の調査自体も、辞書等で「主に本来の意味とされてきた」ものと、そこから異なる理解を分けて示しています。
会話では前後の文脈から分かることもありますが、案内文、仕事のメール、記事などでは二通りに読まれる可能性があります。読み手に迷わせたくない場面では、意味を具体的に書く方が確実です。
場面別の言い換え
不義理や気まずさを表したいとき
- 長く連絡していないので、顔を出しにくい
- 迷惑を掛けた手前、訪ねづらい
- 借りた物を返しておらず、気まずくて行きにくい
高級さや格式を表したいとき
- 格式が高く、気軽には入りにくい
- 高級そうで、少し緊張する
- 予約方法や服装が分からず、初めてでは入りづらい
「敷居が高い」を避けることが目的ではありません。伝えたい理由まで言葉にすると、読み手の解釈に頼らず、文章が具体的になります。
覚え方:敷居の高さではなく、人間関係を思い浮かべる
本来の意味を覚えるときは、家の入口にある敷居そのものの高さより、そこをまたいで相手に会うときの気まずさを思い浮かべると分かりやすくなります。
ただし、現代の会話では「高級で入りにくい」という理解が多数派になっています。本来の意味を知りながら、読み手と場面に合わせて言い換える。それが、言葉の変化を尊重しつつ誤解を減らす実用的な選び方です。

